「アンテプリマ」の創設者であり、香港と日本を軸に活躍するクリエイティブ・ディレクターの荻野いづみが、いま会いたい、第一線で輝き続けている女性をゲストにお呼びして語るエンパワーメント対談企画の第三弾。
今回は内田恭子さんをお迎えし、世界に通用する、強く美しく生きる女性としてのキャリアやその魅力に迫り、前編・後編に分けてみなさまにお届けします。
前編とあわせてぜひご覧ください。
VOL.3 後編
海外で育った環境から感じる
仕事と子育ての両立とこれからの展望
GUEST | 内田恭子 Kyoko Uchida
荻野:ドイツで生まれ、海外で育った環境について、いまに役立っていることやプラスのことなどを教えてください。
内田さん(以降、敬称略):多感な時期にアメリカで育ってきた環境が、いまの私を作りあげていると思います。意見や生き方を含め、自分自身であること。そしてそんな自分を好きでいてあげること。あとは、アメリカでのセラピストの在り方が、いまの自分がしているMBSR(マインドフルネス ストレス低減法)の勉強に大きな影響を与えていると思います。
荻野:世界と関わるご自身の活動などについて教えてください。
内田:いまヨーロッパのIMAのMBSRのteacher trainingの他に、Stanfordでもmindful parentingの授業をとっています。絶賛勉強中です。エンターテイメントが細分化されている中、マスメディアの中で自分が本当に面白いと思うものを見つけるのが難しくなってきているように思います。楽しく仕事をするために、自分が興味あることをしたい。話すこと、伝えることは培ったので、少し違う世界に行ってもよいかなと、考えているところです。
荻野:世界と日本の両方を見て、違いなどを感じることはありますか?
内田:日本の女性の方が、まわりの目を気にして「こうでなければならない」とか「こうしなければならない」という考えに、まだ囚われてしまっているような気がします(もちろん周りにそういう風潮がまだまだ残っているので)。それが育児だったり、仕事だったり、人間関係だったり、自分の価値観にまで、知らないうちに影響してしまっている部分があるのではないかなと思います。
荻野:海外に長くいらっしゃると、グローバルに違いがよく見えてきますよね。日本や日本の女性たちのよさ、優れている点など気づいたことはありますか?
内田:茶道という伝統文化の習い事をしていると、相手への気配りや心遣い、おもてなしの心、自然や美を愛でるというのが、小さな所作の中にもきちんと含まれているということがわかり、昔からそういった心が培われてきているということに、気づかされます。そういうことを学ぶ度に、日本の女性は優れているな、そういう部分はきちんと受け継いでいきたいなと思います。
荻野:母になって、日本と世界の違いを感じたことは?
内田:母になって感じたことは、理想の母はこうしなきゃきけない!というステレオタイプが、日本には根強いなと。育児をしているけれど、それ以外の部分をSNSなどにアップすると、子供をほったらかしにしているとか、批判をされることも。でも母にも自分の人生もあると思うんです。日本人は真面目で、ひとからどう見られるかを気にするし、女性として社会に出て働き、同じように感じているのは、私だけじゃないはずなんじゃないかなと感じることがあります。
荻野:私も母親失格思われていたでしょうし、自分自身もそう感じたことが多々ありました。
内田:子供になにかあると、母として自分を責めましたか?
荻野:はい。子供が親に反抗したり、爆発しているときは、まだ大丈夫だと思います。
内田:近くにいられないのは辛かったでしょうね。母は1人ですもんね。
荻野:子供と喧嘩しているうちは大丈夫。死ななければ大丈夫と思っていました。内田さんは?
内田:私はずっと海外でアイデンティティが日本人なのに、わからなくなるんです。アメリカ好きが大きくなってしまって、日本に帰ってきて生きづらさも感じたこともあり、自分の子供は日本人としてきちんと育てることから始めました。いまは日本の教育で育てていますが、いつか留学させて、一緒について行って、海外に暮らしてみたいですね。小さい頃から、耳元で海外に行くよ、アメリカ行こうねってささやき続けてマインドコントロールしています(笑)。まだ2人とも考えは幼いので、素直にうなずいていますね(笑)。
荻野:子育てと仕事の両立って、やっぱり難しいですよね。
内田:子育てと仕事50:50やっているから両立かというと、ひとによって違う。上の子は母べったりで、低学年のときに3泊弾丸海外仕事に行ったとき、授業参観で担任に呼ばれ聞いてみると、賛美歌で号泣してしまったようで。お母さんがいなかった寂しさから、私が帰ってきていても、歌がかかるといない時期に寂しかった記憶が音楽と結びついて、泣くように。そういった時期が3~4カ月続き、バス停まで送り、バスの窓で泣きそうな子を見送るのは本当に辛かったですね。仕事をするときは「いるからね」と言って、学校の間だけ仕事したりしていましたね。
荻野:私も寂しい思いをさせたと思っています。両立するのに大変なときに助けてくれるひとや頼った先は?
内田:母、シッター、夫を頼りました。でも私じゃないとだめだった。両立って難しいですね。
荻野:話は変わりますけれど、感性を磨くことや知識を広げるために繋がっている、趣味や勉強をされていますか?
内田:茶道、金継ぎ、MBSRの勉強、ヨガなどでしょうか。荻野さんは?
荻野:日々勉強をしています。友達がみんな先生みたいなひとばかり。ひとに会うことが好きで、その方々から学ぶことが多いですね。多くの海外のことを知っていることは重要。百聞は一見に如かず。
内田:逆に質問で申し訳ないのですが、荻野さんのセンスの身に着け方やインスピレーションの源などが知りたいです。
荻野:コレクションでどういう作品を作るか、時代の先をイメージしなければいけないので、戦争がおきていたら、ゴージャスや煌びやかなものからは離れるとか、コロナが終わりそうなときはパーティをしたい気持ちになるなど、世の中を見ながら、我々は先を読み、見ていかなければいけない。時代を敏感に取り入れるアートやアーティストからも刺激を受けたりしています。何がいま起こっているのか見ることって大事。エレベーターで見かけたひとの、服の線のズレが気になってみたり(笑)。もう職業病ね。
荻野:今後、思い描いている展開や夢について教えてください。
内田:いま資格を目指して勉強しているMBSR(マインドフルネス ストレス低減法)を、50歳になったときには、自分のもう一本の柱として、生涯追求していく仕事として確立したいなと思っています。マインドフルネスや心理学に興味があって、臨床心理士になりたかったんです。そのためには大学院にいかなければならなかったので、コロナ禍に勉強を始めました。MBSRは近代の心理学のひとつで、瞑想することでストレスから解放される技法。8週間のプログラムで、うつ病などの改善があり、スポーツ界、経営者にも取り入れられているんです。
荻野:なかなかできないけれど、頭を空っぽにするってことかしら?
内田:そうですね、決して無理をしない、自分を否定しないこと、自分と見つめあう時間を大切にして、自己肯定感を高めて、リラックス、ヒーリングすることだけじゃなく、ストレスになったらどういう行動をするか、と向き合うんです。
荻野:やってみたい、面白いわね!すごく興味があるわ。
内田:アメリカはセラピーやカウンセリングが、常に学校にいたりする身近な環境にあるのに、日本はまだまだ。日本人の性格文化を知った上で、第三者に話すことって難しいし、辛くなる方が多いなと感じていて。その中間のストレスを抱えた方に、ヨガみたいな感覚で取り入れて欲しいなと思って、勉強しています。
荻野:ストレス社会だから、診てもらいたいって思う方がいっぱいいると思いますよ。他にはこれから挑戦してみたいことなどありますか?
内田:とにかくここ数年は未知の分野のインプットの時期と考えています。
荻野:ポジティブに生きるための方法や、息抜き方法は何ですか?
内田:ありきたりですが、大好きな家族や友人と楽しく美味しいものを食べること。あとは気持ちのよいブランケットにくるまって、海外ドラマを見ること。最近疲れやすくなったので、運動をすごくするように。走る、歩くで1万歩をクリアするようにしています。あとは、笑って楽しいメンバーとファンゴルフ。練習しないスタイルで。上の子はラウンドレッスンを始めたので、一緒に行ったりしていますね。
荻野:高校時代、私ゴルフ部だったんですよ。全日本3位、関東女子の3位。ゴルフ女子があまりいなかった時代ですけどね。孫もゴルフ始めたんですよ。
内田:子供は上達早いですよね。息子は飛距離もすごいし、すぐ伸びる。すぐ負けちゃいそうです。
荻野:今度ぜひご一緒しましょう!では、最後に現代に生きる女性へ、アドバイスやメッセージなどをお願いします。
内田:最近よく思うのですが、私たちの世代は難しい世代だと思います。親たち世代の価値観で育てられて、それが最後ギリギリ通用しながらも、これからは新しい時代に変わろうとしている時。自分たちも知らない新しい時代に向かって、その時代を担っていく子供たちを育てていくのは容易ではなく、色々と考えてしまいます。だからこそ、自分の考えや価値観をきちんと持っていくのが、さらに大事になっていくのではないかと思います。お互いに自分らしさを大切にしながら、新しい時代も楽しみながら迎えられるようにしていきましょうね。
荻野:本日は楽しいお話、どうもありがとうございました。
Profile
内田恭子 Kyoko Uchida
元フジテレビアナウンサー。
99年慶應義塾大学商学部卒業。
06年フジテレビを退社、以降フリーアナウンサー、タレントとして活躍。
明るく親しみやすいキャラクターで、幅広い世代に支持されている。私生活では二児の母でもあり、そのライフスタイルは、多くの同性の共感を呼んでいる。
LOCATION:ザ・ペニンシュラ東京
日本の「灯籠」をイメージした24階建てのザ・ペニンシュラ東京は、丸の内、皇居外苑と日比谷公園に面しており、ショッピングの中心地、銀座までは徒歩3分圏内と最高のロケーションに位置し、和のテイストで落ち着きのある客室と個性豊かなレストランをご提供しています。
PHOTO:AKIRA MAEDA(MAETTICO)
HAIR&MAKE:TAKEYUKI SATO
STYLIST:TSUKASA MIKAMI(D Bless Inc.)
EDIT:MAYUKO HAMAGUCHI(SEASTARS Inc.)