



ANTEPRIMA FALL-WINTER 2026-27








銀の蝶と青い鳥
雪の舞う中、いづみさんと並んで立っているミラノでのショーの写真を、とても気に入っている。
たった 8 分間のショーに、これほどまで多くの人の想いが込められているのだということを、参加するまで知らなかった。
舞台は、ファッションはもちろん、会場、照明、音楽まで、夢の中に引き込まれているような時間だった。雪の舞うクライマックスのシーンで30人ものモデルさんが歩く姿は圧巻で、今思い出しても感動がよみがえる。
幾度もやりとりを重ね、この日のためにたくさんのデザインが生まれた。今日は、その中から少しおすそ分けしたいと思う。
行間を読むようなマイペースな私と、ハイテンポで進むファッション業界。ついていけるのだろうかと及び腰になっていたある日、蝶のモチーフをあしらったワイヤーバッグの提案をうけた。「蝶は純銀で編みたい。銀の蝶は空気に触れることで色が変化していくけれど、そういう時間を楽しんでいただけないかなと考えている」と聞いた。銀製品の時間経過で生まれる変化を、蝶がそこにいて呼吸している証のようにとらえるという発想に、「なるほど」と思った。それまでは提案待ちの私だったが、デザイナーチームの思考に触発されてエンジンがかかり、白いサテンのリボンのバッグを提案した。色は真っ白だけれど、バックの名前は《青い鳥》とつけたいと言った。《青い鳥》は、私の思考をデザインチームの皆さんと共有する過程で、「好きな音楽は?」と質問を受けたときに紹介した、アカペラ曲のタイトルである。この曲は目を閉じてきくと、空の上から地上を見下ろす鳥の視線にも、また地上から空を見上げる人の視線にもなれる雄大な一曲だ。音楽は彫刻のように形はないけれど、いつもそこに音だけでイメージの景色をもたらしてくれる。私は、真っ白なサテンのリボンに、一曲分の白い楽譜を連続してあしらってもらった。雄大な景色を織り込んで、かわいらしいひとつのバックが完成した。デザインチームが提案してくれた蝶をはじめ、ワイヤーバッグはすべて、たった一本の糸から手編みでつくられている。それが、使う人それぞれの人生に寄り添って形を変え、思い出を重ねていく。完成したワイヤーバックや洋服がショーの光を浴びている。
これから誰かの人生に寄り添っていく、それぞれの物語のはじまりによせて。
宮永愛子
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